任意後見人に対する監督 ~任意後見監督人の職務~ 【任意後見】
法定後見では、原則として家庭裁判所自らが直接成年後見人等へ監督を行いますが、任意後見では、任意後見監督人が必ず置かれ、その任意後見監督人が任意後見人に対し監督をします。家庭裁判所が直接任意後見人を監督したり、指導したりすることはありません。家庭裁判所は、自らが選任した任意後見監督人の業務に対して、監督・指導することになります。
このように家庭裁判所は、間接的に任意後見人を監督するわけですが、任意後見監督人の報告に基づき任意後見人を解任する権限を持っています。
任意後見監督人は、いつでも、①任意後見人に対し任意後見の事務の報告を求め、②任意後見人の事務、本人の財産の状況を調査することができます。これに対応して、任意後見人には、報告聴取や調査に応じ、協力する義務があります。例えば、任意後見監督人から、帳簿や預金通帳の提示を求められた場合には、任意後見人はこれに応じなければなりません。
また、このほかに、任意後見監督人には、①急迫な事情(任意後見人の病気、不在)がある場合に任意後見人の代理権の範囲内で必要な処置を取ること、②本人と任意後見人の利益が相反する場合に、本人を代理することも職務として決められています。
他方、任意後見監督人は、定期的に家庭裁判所に任意後見人の職務状況を報告しなければなりませんが、その前提として、任意後見監督人は少なくともこの報告時期に合せて定期的に任意後見人の仕事ぶりや本人の財産の状況を調査する義務があると考えられます。任意後見監督人は、任意後見人の解任を求める権限があります。
家庭裁判所は、任意後見人からの定期報告によって、任意後見人の仕事ぶりをチェックしますが、定期報告だけではよく分からなければ、いつでも任意後見監督人に報告を求め、あるいは調査を命じることができます。また、監督の事務について必要な処分を命じることができます。しかし、前述のとおり、家庭裁判所が直接任意後見人から事情を聴取したり任意後見人に命令を出すようなことはありません。